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てきとうなはなし

https://twitter.com/miel_snow/

モリタのこと

Go Morita V6
原作のモリタサイコパスで首を絞めることに性的興奮を覚える異常者で、それに対する苦悩があるらしい。

映画のモリタは1度目に見たときはサイコパスではなく、脳内の声に耳を叩くシーンに人格が乖離してるのかな、とかイジメによって壊された心が教室での自慰行為で再起不能なまでに潰されたのかなって思った。

あの手の猟奇的な話で『サイコパス』もだけどそれより『多重人格者』はまあまあ卑怯な手だな思ってるのでちょっと引っかかってたんだが、2回目見たとき多重人格者でもなくそして原作の通りサイコパスなんじゃないかと。

ウィキペディアからの引用

サイコパスの特徴

・良心が異常に欠如している

→友人(とは言い難いが)をまるで普通に遊びに誘うように殺人に誘う

・他者に冷淡で共感しない

→オカダとの居酒屋での会話

・漫然的に平然と嘘をつく

→カフェに初めて来た、いつもとは言ってない等

・行動に対する責任が全く取れない

→煙草を注意されて「もう吸ってませんから」

・罪悪感が皆無

→殺人の後の食事

・自尊心が過大で自己中心的

→通りすがりの女性への殺人暴行

まんまだった。

あの「もう吸ってませんから。もう吸ってませんから。もう吸ってませんから!」の(あ、こいつやばい…)と思わせる。『現実にいそうな避けて通るタイプ』のリアルさ。

でも暴力を厭わない2人組みには勝てない。捕食者のモリタも立場が変われば捕食される側になる。

そして、

・口が達者で表面的は魅力的

口が達者で、はともかく『表面的は魅力的』

モリタは薄気味悪くて全くかっこよくも可愛くもない。表面的ですら魅力的ではない。いちいち『ジャニーズが…』って言われるのめんどくさくなってきたけど、ジャニーズがやる意味がそこにあるのかも…でもジャニーズが云々飽きた。

ただサイコパスだから殺人犯してもしかたないね、ではない。サイコパスでも殺人を犯さない人の方がほとんどなのだから。

モリタにだってオカダに話しかけられて座っていい?って聞かれてすぐタバコの火を消してたり、ちゃんとゴミ箱に空き缶捨ててたり、パチンコ屋でおっさんに笑い返してたり、ときどき見せる『普通』があった。

そのモリタの異常性を引き出したのは高校時代の壮絶なイジメで、サイコパスとは別にあったかもしれない【普通の心】を完全に殺したのは裏切られたときの強制的な自慰行為。

恐らくあのとき自分の異常性癖にも気づいたのでは、とか思うと原作の主旨を透けさせてるのかな。

耳鳴りは多重人格なのではなく「どれが食べたい気分かな」ってメニューを前に考える心の声が人より大きくて強くて、殺人に向かうだけなのでは。確実に精神を病んではいるんだろうが。

ユカに執着してたのは何かしら惹かれたんだろうけど、恋愛感情っていう甘い言葉は似合わないからなぁ。獲物を弄ぶようにじわじわ追い詰めて犯して殺したかったんじゃないかな。

それが最大級の愛の証みたいな錯覚で。

ラストは賛否両論あるだろうけど、1回目見たときはあのラストに救われたし、そうであって欲しかった。勝手に性善説を心から望んでた。

だからあそこで息ができたけど、2回目はやっぱり蛇足な優しさかなぁとも思ったり。

ただ繰り返すけど1回目見たときはどこかなにか救いがあってくれって思いながら見てたから、繰り返し見るわけではない人たちの大多数はあのラストでしか報われない気がする。

でもモリタとオカダ、加害者と被害者どちらにとってもあんな不幸なラストはないと思う。

モリタはもう未来ではなく過去でしか生きられないし、オカダは普通多くの人が選んでしまいがちな本来なら罰せられることのない嘘の罪を、モリタへの嘘と安藤への嘘の罪を両方背負っていく。

そこがまだ飲み込めないんだよなぁ。

性善説だと尋常じゃなく辛い、ただサイコパスだからで切り捨てるとこの映画の良さの1つ、『もしかして自分もどこかで間違えたら同じようになっていたかもしれない』が無くなるし。

どっちにしろあのラストが精神に叩き込むボディブロー凄まじい。じわじわ精神を病んでく気がする。

オカダが運転するモリタに言う「モリタくんは昔はそんなことする人じゃなかったじゃない」(うろ覚え)っていうセリフのチープさ。

でも自分がオカダの立場になったらそんなチープなセリフしか言えないだろうなと思う。そういう細かいディテールが妙にリアルさを出しているんだろう。

自分はあんなにお人好しではないけども結局オカダで、安藤のように人を許したり自分の過ちを省みれる人になりたいけど何かを踏み間違えればモリタだったかもしれないし。

もしくはただモリタの横を避けて通っただけで殺されていた人のはオカダかもしれなくて。

オカダは普通の人でたまたま不釣り合いな可愛い女の子に好かれた運の良さがモリタのスイッチを押してしまったところが運が悪い。

それでも理不尽に殺された人たちよりはずっと運がいい。たまたま殺されなかっただけ。

モリタに殺された人たちはたまたま運が悪かった。こんなにやるせなくてむなしくなることはない。

避けられない不運というどうしようもなさ。

同時にモリタのことは許せないし気持ちもわからない、いじめられてたこと以外はかわいそうだとも思わないけど、彼の人生に穏やかな時間と可愛がってた犬がいたことがあるんだという事実だけは本当に辛い。

そして理解できない殺人鬼の記憶と自分が重ね合わせられる記憶があるのもすごく怖い。

人は被害者を『悪いとこがあったからそういう目にあったんだ』と思い込むことで自分が同じ目にあうかもしれないという恐怖心から逃れる最低な仕組みがあるらしいけど、加害者に対して『同じ何かを持つ』はそれの逆で、同じ人間だと認めてしまうんだもの。